「 おしん 」女房言葉?          


「 おしん 」というネーミングの由来は「信じる、信念、心、辛抱、芯、新、真」 などの「しん」とされています。これに「 お 」を付けた呼び名です。

因みに、先輩奉公人の名前に「 おけい 」、「 お夏 」も有ります。

「 おしん 」の「 お 」は何か?

これを、★★A.話される状況、★★B.アクセントから見てみました。

「おしん」は女主人が家事に関して、奉公人に対して使われています。

このことから、この言い方は、女房言葉ではないか、と思います。

名詞の接頭辞に「お」がつく言葉は、以下のように家事に関するものが多いです。

また、アクセントの面では、「お」を付けるか、否かでニュアンスが変わります。

「しん」では「高低」のアクセントが、「おしん」では「低高低」となります。

そうすると、和らいだ円やか語感となり、愛称のようにも感じられます。


逆に、テレビの経済番組で「客」と言われることがあります。(アクセントは「低高」)

確かに、消費者は「客」に違いないのですが、言い方に違和感を感じるときがあります。

「お客さま」の必要はありませんが、せめて「顧客「低高低」」が好ましいと思います。

では、女房言葉について見ていきます。



★★★A.話される状況

名詞につく接頭辞に「お」が有ります。

「お」は、武士言葉で「おぬし=お主」など例外もありますが、多くは「女房言葉」です。

女房言葉(女房詞、女中詞)とは、室町時代初期頃から宮中や院に仕える女房が使い始め、優美で上品な言葉遣いとされ、主に衣食住に関する事物について用いられ、のちに将軍家に仕える女性・侍女に伝わり、武家や町家の女性へ、さらに男性へと広まったものです。

現在でもその一部が用いられている隠語的な言葉である、とされています。

その典型例が、語頭に「お」を付けて丁寧さをあらわすものです。

次のような例があります。

1.「おいしい」=味がよいこと=古語「いし=美し=好ましい、優れるの意」
  +接頭辞「お」

2.「お造り」=魚の刺し身(切り身)=「武家社会では『刺す』『切る』の言葉を嫌悪」 
  =当時、都の関西地方で言われていた刺し身の呼び方=「造り身」
  +接頭辞「お」=「お造り身」⇒「お造り」

3.「おもちゃ」=「持て遊び」⇒「持ち遊び」⇒「もちゃそび」⇒「もちゃ」
  +接頭辞「お」

他に、語頭に「お」が付く女房言葉の事例があります。

おかか(鰹の削り節) 「お」+「鰹節」の「か」を2回重ねたものか。
おかき(欠餅) 当初は「鏡餅」を砕いて焼いて食べたことから。
おかず(御菜) 「(惣菜の)数を取り揃える」
おかべ(豆腐)
おかちん(餅 江戸時代) 「お」+餅を意味する古語「搗飯(かちいい)」⇒「かちん」。
おから 大豆から豆乳を絞った後の残りかす。
おこわ(強飯:こわめし)
おさつ(薩摩芋:さつまいも)
おじや(雑炊) 「じやじや」という煮える時の音からというが、語源不明。
おだい(飯) 「御台盤」の略語。食器を載せる脚付きの台の意⇒転じてご飯の意になった。
おみおつけ(味噌汁)味噌の女房言葉「おみ」+飯に「付け」るもの+「お」
おでき(できもの)
おでん(味噌田楽、煮込み田楽)焼く田楽⇒煮込み田楽が普及「田楽」⇒「でん」+「お」
おなか(腹)
おなら(屁)「お鳴らし」 「鳴らす」から来た語。
おにぎり・おむすび(握り飯)
おはぎ(牡丹餅) 小豆の粒を萩の花に見立てた表現。
おはぐろ 元は「歯黒め」と言った。
おひや(水) お冷。冷水のこと。
おひろい(歩行)動詞「拾う」から変化。
おまる(便器) 「放る(まる、ほまる)」は排泄を意味する動詞(例:放屁)。
おまわり 副食物。
おめぐり 副食物。主食を取り巻くように皿を並べることからか。
おまん(饅頭)
およる(寝るの尊敬語)「御夜」の動詞化。



★★★B.アクセント

接頭辞「お」が付かない元々の言葉と、「お」が付く女房言葉の事例があります。

この二つの言葉のアクセントの違いを比較してみます。

★まず、接頭辞「お」が付かない元々の言葉のアクセントから見ていきます。

1.接頭辞「お」が付かない元々の言葉の数を「拍」で分けます。例は以下の通りです。

1拍=「茶(チャ)」2拍「酒(サケ)」3拍「魚(サカナ)」4拍「丼(ドンブリ)」

2.次に、その言葉のアクセント(音の高低による高低アクセント)を見ていきます。

1拍=「平板型」「起伏1型」

2拍=「平板型」      「語頭高型」      「語尾高型」

3拍=「平板型」      「語頭高型」「語中高型」「語尾高型」

4拍=「平板型」      「語頭高型」「語中高型」

A.「平板型」は、1の拍で見た「茶」2拍「酒」3拍「魚」4拍「丼」が該当します。

B.「起伏1型」は、「湯(ゆぅ:後半が低くなる)」が該当します。

C.「語頭高型」は、2拍「箸」3拍「天気」4拍「小遣」が該当します。

D.「語中高型」は、3拍「試験」4拍「手洗」が該当します。

E.「語尾高型」は、2拍「米」3拍「言葉」が該当します。

★次に、接頭辞「お」が付いた言葉のアクセントを見ていきます。

1拍~4拍を通じて、「起伏2型」=「お」の後の部分が「上り調子=低高」となります。

ただ、「起伏3型」=「お」の後の部分が「山型=低高低」となるものもあります。

「お車」「お仕事」「お手拭」「お丼」「お汁」「お箸」「お菓子」「お肉」「お蚕」
「お天気」「お三時」「お試験」「お小遣」「お大尽」「お手洗」などです。



★★★C.附録

最後に、接頭辞に「お」を付ける場合とそうでない場合の違いに触れておきます。

★接頭辞に「お」を付ける場合

1.一般に、短い言葉ほど付けやすい。例:「お米」「お豆」「おネギ」

2.「オ」で始まる動詞に「お」が付く例もあるが、例外的である。
  例:「お教えくださる」「お起きになる」「お送りする」

★接頭辞に「お」を付けない場合

1.外来語には、原則として付けない。例:「てんぷら」例外「おたばこ」

2.長い言葉には付けにくい。例:「もちごめ」「うるちまい」「大豆」「あずき」
 「枝豆」「そら豆」「玉ねぎ」「物置」「まな板」「包丁」   
  例外:「お台所」「お里帰り」「お仕立て直し」

3.発音との関係で、「オ」の音で始まる名詞には付けない。例:「帯」「扇」「桶」

4.自然現象には、一般に付けない。例外:「お日様」「お天道様」
  でも「お月様」「お星様」は幼児向け。

  天体以外の自然現象(四季:気象:地理:動物:植物)には付ける場合は限られる。
  例外:「お山」例:「稲」

5.品格との関連で、品の悪い言葉や軽蔑を表す言葉には付けない。
  例:「泥棒」「わいろ」「けち」「ぐず」「とんま」「間抜け」「落第」「左遷」
  例外:「お馬鹿」

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