右脳派・左脳派区分は俗説

左右脳の機能の相違を注視
             

人は往々にして「惑う」「悩む」「迷う」ことがある気がします。

「惑う」は「抽象的な事柄について」、「悩む」は「具体的な事柄について」考えを巡らすことだと思います。

そして「迷う」は悩んでいることの解決策が複数ある場合に、路の分岐点でどの路を選ぶかを決めにくい行動だと思います。

動物の行動には「迷い」はありませんが人の場合、なまじ考えることが出来るので「迷い」があり、往々にして決断に遅れが出る ことがある気がします。



脳科学者・中野信子氏が暴く「右脳人間はクリエイティブ」という俗説の嘘

 



以上の講演会の内容で、重要な個所は以下の通りです。(『★~』部分は講演部分です。)

ちなみに、右脳は解像度は低いものの「全体視」が出来るので、右脳の機能で事態に感覚的に即応して反射的に対応出来ます。

これに対し、左脳は「部分視・中心視」が出来、解像度が高く、言語を通じて事態に論理的に対応出来ます。



『★右脳と左脳の機能は違うが、有意な個人差はない

右脳人間、左脳人間というのはいないのだということを示した論文があります。

2010年『PLoS ONE』という雑誌に掲載されたものです。

この研究では、2年間にわたって、7歳~29歳までの被験者1,000人以上の脳の神経活動を比較検討しています。

7,000以上の区域に脳の領域を分けて、そのデータ画像から右脳・左脳の機能に個人差があるかどうかということを調べたんです。

メタアナリシスというのですが、この解析の結果、右脳・左脳の機能分化に有意な個人差はないということがわかりました。

右脳と左脳、どういう機能分化があるのかぐらいは知っておいてもよいかと思いますので、ご説明しますと、右脳は「全体視」、あるいは空間解像度・時間解像度の低い部分の分析を担当しています。これは人間以外の生物でもそうです。

通常とは違う、異常な事態へ対応して、それに適切な反応をする。そういう役割を担っているのが右脳です。

この機能に関しては「天敵の回避」という意義があったんだろうと、多くの学者が考えているようです。

魚類、両生類、鳥類、哺乳類、どれも脳を持っていますけれども、それらの動物たちにおいて、右脳はそのような機能を持つと考えられています。

左脳はどういう機能を持っているかというと、「部分視・中心視」です。

これは、時間解像度、空間解像度、いずれもそうです。

細かいところ、解像度の高いところを認知する、それに特化した機能を持っている脳ということになります。

★右脳と左脳では処理する情報の解像度が違う

時間解像度というのはなにかというと、言語ってありますね。

私たちは、言語を使ってコミュニケーションを取ります。

言語は、左脳で処理しますね。

言語野というのは、右利きの人なら90パーセントは左脳にあります。』



右脳・左脳タイプ分類はウソだった!-俗説が広まる55年の歴史

 

右脳と左脳の構造の違いを発見 -記憶をつかさどる海馬に違い-

 

『〈わたし〉はどこにあるのか ガザニガ脳科学講義』

(マイケル・S・ガザニガ著/藤井留美訳)

 

疑問の発端の両腕廻しに戻って考えたいと思います。

利き腕を使うことが理にかなっている場合はあります。

例えば、水泳クロールの息継ぎで、どちらに顔を上げるかです。

息継ぎのためには、顔を水面から上に上げる必要があります。

その場合、利き腕で水を掻き、顔の向きを変えることは納得できます。

でも、両腕廻しではそのような必要はありません。



人は物事を考える時に左脳を使いますので、意識的行動では左右の使い分けをしない場合があります。

剣道では竹刀を右手で鍔近くに添え、左手で手前を持ち、逆に持つことはありません。

でも、画期的なのが二刀流です。

大谷翔平君は、左打ちですが、利き手は右腕「右利き」で、右投げです。

左打ちは右肩への打球を避ける意味もあるようです。

これとは逆に、利き手は左腕の「左利き」でも、右投げに移行した選手も多くいます。

このように、意識的行動では左右の使い分けが出来る気がします。

サッカー選手のポージングも、意識的行動が無意識を妨げているかも知れません。



問題は、左脳を使わない無意識下の行動です。

左脳を使う以前に、右脳が働く場合があります。

「皿を取り落としそうになった場合に、どちらの手が先に出るか?」



また、左脳を使って、例えば人の話を聞くなどに集中している時に、無意識的に行動することがあります。

「目の前に珈琲が出された場合に、どちらの手でカップを取るか?」

この場合には、無意識の状態で「指組み」「腕組み」をしているのかも知れません。



無意識状態での「両腕廻し」での左右腕の上下は、利き腕使いが習慣となって身についた結果とも思われます。



「脳の世界」は未知の不思議な世界で、これからも学んで行きたいと思います。







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