モネが愛した光と水の風景 池の水面に浮かぶ雲              



モネが亡くなったとき、机の上に、読みかけのボードレールの詩集 『巴里の憂鬱』の「異邦人」の頁が風にめくれ、開かれていたそうです。



「異邦人」

「お前は誰が一番好きか?云ってみ給え、謎なる男よ、お前の父か、お前の母か、妹か、弟か?」

「私には父も母も、妹も弟もいない」

「友人たちか?」

「今君の口にしたその言葉は、私には今日の日まで意味の解らない代ものだよ」

「お前の祖国か?」

「どういう緯度の下にそれが位置しているかをさえ、私は知っていない」

「美人か?」

「そいつが不死の女神なら、愛しもしようが」

「金か?」

「私はそれが大嫌い、諸君が神さまを嫌うようにさ」

「えへっ!じゃ、お前は何が好きなんだ、唐変木の異邦人さん?」

「私は雲が好きなんだ、…あそこを、…ああして飛んでゆく雲、…あの素敵滅法界な雲が好きなんだよ!」

「異邦人さん」は、『巴里の憂鬱』の冒頭を飾る散文詩。

異邦人とはロマのことです。

パリという大勢の人が集まる大都会で、どうしようもない孤独を抱えていたボードレールは自身の姿を異邦人に重ねました。

ボードレールは従来の「美しいパリ」や「古き良きパリ」を賞賛するのではなく、近代化しつつあるパリに取り残された貧しい人、孤独な異邦人に関心を寄せました。

そんな人々の生々しい血の温かさやうめき声を抉り出した『巴里の憂鬱』には、思わず酔ってしまうような美しさがあります。

モネ展「連作の情景」上野の森美術館で2024年1月28日まで。

睡蓮など約60点で印象派の光にふれる【展覧会】

 

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