年の瀬の京都に、音もなく降りしきる雪。

さまざまな青を使い分けて描かれた家並みから、外の寒さと静けさ、それとは対照的な室内の温かさや、新たな年を待つ凛とした緊張感までも伝わってくるようです。
魁夷はこの作品を、たびたび宿泊していた京都ホテル(現在のホテルオークラ)の屋上で描いたスケッチを基に制作したそうです。

日本画の伝統色である青色に、海外を旅する中で得たインスピレーションを融合させたその色彩は、日本人の心に、普遍的な懐かしさを呼び起こします。

北欧の旅から帰って、私はこんどこそ、生涯の中で最も心を篭めて、京都を深く味わってみたいと思った。
それは、京都の持つ日本的なものの良さに、無理なく心が通い、深く触れ合える地点に、私の遍歴が達したと思うからでもある。
(東山魁夷談『風景との対話』1967年)

私が常に作品のモティーフにしているのは、清澄な自然と素朴な人間性に触れての感動が主である。
戦後の時代の激しいそして急速な進みの中で、私自身、時代離れのした道を歩んでいると思う時が多かった。
しかし、今ではそれで良かったと思っているし、また、それをこれからも貫き通したいと念じている。
(東山魁夷談『日経ポケット・ギャラリー』1991年)

鐘の音に耳を傾けているうちに、雪がまた静かに降り始めます。   年も暮れていきます。

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