南宋の政治家・詩人:陸游(りく ゆう)           


陸游(りく ゆう、1125年~1210年):南宋の政治家かつ詩人である。
南宋の代表的詩人で、范成大・尤袤・楊万里とともに南宋四大家の一人。
現存する詩は約9200首を数え、中国の大詩人の中でも最も多作である。
その詩風には、愛国的な詩と閑適の日々を詠じた詩の二つの側面がある。
強硬な対金主戦論者であり、それを直言するので官界では不遇であった。
しかしそのことが独特の詩風を生み、愛国詩人として広く知られている。





「 山西の村に遊ぶ 陸游 」

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遊山西村 陸游

莫笑農家臘酒渾
豊年留客足鶏豚
山重水複疑無路
柳暗花明又一村
簫鼓追随春社近
衣冠簡朴古風存
従今若許閑乗月
拄杖無時夜叩門

現代語訳

農家の作り置きの濁り酒だが、バカにしたものではない。
豊作の年だったので、鶏も豚もお客をもてなすのに十分な量がある。

山が重なり、川が折れ曲がって、もうお仕舞いかと思うと、
そこでまた道が開けた。

柳の陰は暗く、花は明るく、また一つの村が現れた。

太鼓の音が追ってくるのは、春の祭りが近いからだ。
村人のいでたちは簡素なもので、昔風を残している。

今後もし閑な時に月に誘われて訪ねてきてもいいとおっしゃるのなら、
杖をついて時間に関係なく、夜中にご訪問いたしますぞ。



「 憤りを書す 陸游 」

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書憤 陸游

早歳那知世事難
中原北望気如山
楼船夜雪瓜洲渡
鉄馬秋風大散関
塞上長城空自許
鏡中衰鬢已先斑
出師一表真名世
千載誰堪伯仲間

現代語訳

若い頃は世の中に困難があろうなど、考えもしなかった。
ひたすら北方の中原を望んで、気は山のように盛んだった。

雪の夜、兵船で敵方につっこみ、瓜洲の渡で敵を撃退したこともあった。
また秋風の吹くころ、鉄甲の騎馬隊で大散関を奪回したこともあった。

辺境における万里の長城と自らを称していた私だが、
それも今は空しく、鏡の中の姿は老い衰え、すでに鬢髪には白いものが混じっている。

かの諸葛亮孔明が書いた「出師の表」は、まことに稀代の名文であった。
それから千年たっているが、孔明に匹敵するような人物がいただろうか。

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