「 餃子 」東西南北          


餃子に見る食文化の伝播

食文化の世界への伝播の例として、慣れ親しんだ「餃子」を見て行きたいと思います。

餃子は、既に述べてきた通り、祭事食です。
祭事食が日常食になることの怖さを語る話があります。

「 現在でも北京市民の間に伝わる李自成にまつわる次の逸話がある。
李自成は北京入城後に皇帝に即位して、餃子を毎日のように食べた、という。
「餃」の文字は「交」に通じ、「末永く」の意味を持っていたため、歴代皇帝たちは、社稷(しゃしょく=古代中国で、天子や諸侯が祭った土地の神(社)と五穀の神(稷)=朝廷、国家)が「細く長く」続くように、春節にしか餃子を食べなかった。
しかし李自成は、そのしきたりを破って毎日餃子を食べ続けたため、順朝はすぐに滅んでしまった。 」とか。

餃子の歴史は古く紀元前6世紀頃、山東地域で誕生したと言われています。
更に、唐代の墳墓の壷の中から、餃子が乾燥状態で発見されています。
また餃子は祭事食であるとともに、北の地で戦闘食としても重宝されました。
お湯で茹でれば直ぐ食べられるからです。 「軍隊の行く所、餃子あり」です。

そのせいもあり、餃子は、発祥の地、山東地域から東西南北へと拡がっていきました。
紀元前7000年頃に、肥沃な三日月地帯で始められた小麦栽培は、紀元前3000年前には中国にもたらされていました。 小麦粉の加工品の餃子は、今度は、この道を逆に辿り西へと進み、また、東に、北に、南に拡がっていきました。
餃子は、肉、エビ、野菜などで作った具材を、小麦粉を原料とした皮で包んで茹で、焼き、蒸し、油で揚げた物で、それぞれが茹で餃子(水餃子)、焼き餃子、蒸し餃子、揚げ餃子と呼ばれています。

元祖は中国の茹で餃子(水餃子)です。
東は、韓国:マンドゥ、北朝鮮:ジャガイモ餃子、日本:羽根付き餃子に。
北は、モンゴル:ボーズ、バンシ、ロシア・ブリアート:ブーザ、ロシア:ペリメニに。
南は、ネパール:モモ、インド:サモサ、ウズベキスタン:マントゥイ、
   エジプト:サンブサに。
西は、グルジア:ヒンカリ、トルコ: マントゥ、レバノン:サンブサ、
   イスラエル:クレプレハ、ウクライナ: ヴァレーニキ、イタリア:ラビオリ、
   スペイン: エンパナディージャ、ドイツ:マウルタッシェン、
   ポーランド:ピエルク、リトアニア:ゴルドゥーナイ、となりました。

食文化も、文化の重要な一部分です。世界で日本食が注目されている今日、日本食が世界にどのように広まっていくか、楽しみです。

        


[ 2021年以降:デイリー 目次 ]


inserted by FC2 system